1. 自閉スペクトラム症(ASD)とは?
自閉スペクトラム症(Autism Spectrum Disorder: ASD)は、生まれつきの脳機能の発達の偏りに起因する発達障害の一つです。
以前は「自閉症」「アスペルガー症候群」「広汎性発達障害(PDD)」などと呼ばれていましたが、現在は、その特性が連続的であることから「スペクトラム(連続体)」という言葉を用いてASDとして統一的に診断されます。
ASDの特性は、知的発達の遅れを伴う場合もあれば、知的な遅れがない場合もあり、症状の現れ方や重症度は個人によって大きく異なります。
2. ASDの核となる二つの主な特性
ASDの診断は、次の二つの核となる特性が、幼少期から認められ、日常生活に困難をきたしていることによって行われます。
① 対人関係と社会的コミュニケーションの持続的な困難
人との関わり方や、言葉・非言語的なコミュニケーションにおいて特有の困難が見られます。
社会的・情緒的相互性の困難:
他者の感情や意図を察すること、共感することが難しい。
自分の興味があることばかり一方的に話してしまう。
年齢相応の対人関係を築くことが難しい。
非言語的コミュニケーションの困難:
アイコンタクト、表情、ジェスチャー、身振り手振りといった非言語的な合図を使うことや、それを理解することが難しい。
関係性の構築・維持の困難:
想像的な遊びや、他者と興味を共有することに困難を示す。
年齢や状況に応じた振る舞いが難しい。
② 限定された、反復的な行動、興味、活動
特定の物事や行動パターンへの強いこだわりや、感覚への特異な反応が見られます。
反復的な行動・動作:
手をひらひらさせる(フラッピング)、体を揺らすなどの常同行動。
特定の音や動きに強く反応したり、こだわりを示したりする。
こだわりとルーティン:
特定の手順やルーティンに固執し、急な変化に極度に抵抗する。
物の配置や順序が少しでも違うと混乱する。
極めて限定された強い興味:
特定の分野(例:電車、恐竜、特定の歴史など)に非常に強い興味と知識を持つ。他の事柄には関心を示さないことが多い。
感覚特性:
特定の音や光、肌触りに過敏(感覚過敏)になったり、逆に痛みや温度変化に鈍感(感覚鈍麻)になったりする。
3. 診断と早期発見の重要性
ASDの特性は、2~3歳頃までに気づかれることが多いですが、軽度の場合や知的な遅れがない場合は、社会生活での困難が表面化する学童期以降に診断されることもあります。
早期診断の意義:
早期に診断を受けることで、その特性に応じた療育(発達支援)や教育をすぐに開始でき、二次的な障害(例:対人関係の失敗による自己肯定感の低下)を防ぐことにつながります。
併存症:
ASDは、注意欠如・多動症(ADHD)、知的障害、不安障害、うつ病などを併存しやすいことが知られています。これらの併存症への適切な対応も重要です。
4. ASDへの支援と社会参加
ASDを持つ人々への支援は、苦手な部分を訓練するだけでなく、その特性を活かし、環境を調整することが中心となります。
① 環境の構造化
ASDを持つ人々は、見通しが立たない状況に強い不安を感じます。視覚的なスケジュールや手順を明確に提示することで、「いつ、何をすればいいか」が分かりやすくなり、自立的な行動を促します。
② コミュニケーションの明確化
曖昧な表現や抽象的な言葉は避け、「具体的に、端的に」話すことが大切です。言葉だけでなく、写真やイラストを用いた視覚的なコミュニケーション支援が有効な場合が多いです。
③ 特性を活かした就労支援
ASDを持つ人々は、強いこだわりや集中力、記憶力といった得意な特性を持っています。これらの特性を活かせるよう、変化が少なく、明確な手順が定められている仕事や、興味を深く追求できる専門職など、適性を活かした就労支援が重要です。
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