摂食障害

1. 摂食障害とは?

摂食障害(Eating Disorders)とは、食行動や体重、体型に対する異常なこだわりや認識の歪みを特徴とし、それによって心身の健康と日常生活に重大な支障をきたす精神疾患の総称です。

単なる食事の偏りやダイエットとは異なり、生命に関わる危険性を伴う深刻な病態であり、早期の専門的な治療が必要です。
摂食障害は主に神経性やせ症と神経性過食症の二つの主要な病型に分類されます。

2. 摂食障害の主な病型と症状

摂食障害の症状は、体重と食行動のパターンによって大きく異なります。

① 神経性やせ症(Anorexia Nervosa: AN)

極端な食事制限や過度な運動により、低体重であるにもかかわらず、さらに体重が増えることを強く恐れ、痩せていることを認識できない(あるいは否定する)病態です。

極端な体重減少と低体重:標準体重(BMI 18.5未満)を大きく下回る状態を持続します。
食行動の制限:カロリー摂取を極端に制限し、特定の食品群を排除します。
身体の合併症:栄養失調により、無月経(女性)、徐脈(心拍数の低下)、低血圧、骨粗鬆症、脱毛、体毛の増加(産毛)、電解質異常(カリウムの低下など)など、命に関わる重篤な合併症を引き起こします。

② 神経性過食症(Bulimia Nervosa: BN)

コントロールを失った過食エピソード(短時間に大量の食べ物を食べる行為)を繰り返し、その後に体重増加を防ぐために不適切な代償行動(自己誘発性の嘔吐、下剤・利尿薬の乱用、過度の運動など)を行う病態です。体重は正常範囲内にあるか、わずかに過体重であることが多いです。

過食エピソード:短時間で大量の食べ物を、抑えがきかない感覚と共に摂取します。
不適切な代償行動:過食後の罪悪感や体重増加への恐怖から、嘔吐や下剤乱用を繰り返します。
身体の合併症:自己誘発性の嘔吐により、唾液腺の腫れ、歯のエナメル質の損傷、食道炎、電解質異常などを引き起こします。

③ その他の病型

過食エピソードを繰り返すが、代償行動を行わない**むちゃ食い障害(Binge Eating Disorder: BED)**なども、近年は重要な病型として注目されています。

3. 原因と発症のメカニズム

摂食障害は、一つの原因で発症するわけではなく、生物学的、心理的、社会的な複数の要因が複雑に絡み合って発症すると考えられています。

生物学的要因:脳内の神経伝達物質(特にセロトニン)の異常が、食欲や気分の調節に影響を与えている可能性が指摘されています。また、遺伝的要因も関与するとされます。
心理的要因:完璧主義、自尊心の低さ、コントロール欲求の強さといった性格特性を持つ人に発症しやすい傾向があります。食事や体重をコントロールすることで、人生や感情をコントロールできていると感じようとすることがあります。
社会的・文化的要因:痩せていることを美徳とする痩身志向の文化やメディアからの影響が、発症の引き金や病態の維持に関わります。

4. 治療と社会生活における支援

摂食障害の治療は、生命の危機を回避する身体的治療と、食行動や考え方を修正する精神科的治療を並行して行う、多角的アプローチが必須です。

① 身体的治療(入院治療を含む)

神経性やせ症で極度の低体重や重篤な合併症がある場合、生命を維持するための栄養補給や、電解質異常の是正のために入院治療が優先されます。体重回復は、精神状態を安定させるための土台となります。

② 精神療法(心理療法)

治療の中心は、専門家による**認知行動療法(CBT)や対人関係療法(IPT)**です。特に摂食障害に特化したCBT(CBT-E)では、体重や体型に対する過度のこだわり、過食・排出行動のパターンを具体的に修正し、健康的な食行動と認知の歪みの改善を目指します。

③ 家族の役割と支援

思春期に発症した摂食障害の治療には、家族が治療チームの一員として関わる家族療法が有効であることが多いです。家族が病気の特性を理解し、患者の食行動をサポートする役割を担います。

④ 再発予防と回復

回復には時間がかかりますが、治療を継続することで、食行動が安定し、体重や体型への執着が薄れ、生活の質を取り戻すことができます。治療終了後も、環境の変化やストレスによる再発を防ぐための継続的なサポートが重要です。

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