1. 統合失調症とは?
統合失調症(Schizophrenia)は、思考、感情、知覚、行動といった精神機能が統合されずに混乱し、社会生活に支障をきたす精神疾患です。
多くは思春期から青年期にかけて発症し、およそ100人に1人がかかる、比較的頻度の高い病気です。
この病気は、「心が分裂する」という誤解から以前は「精神分裂病」と呼ばれていましたが、現在では精神機能の統合が失調する(うまくいかなくなる)という意味で「統合失調症」という名称が使われています。
早期の発見と適切な治療によって、多くの人が症状をコントロールし、社会生活を送ることが可能です。
2. 統合失調症の主な症状
統合失調症の症状は、主に「陽性症状」「陰性症状」「認知機能障害」の三つに分類されます。
① 陽性症状(あるはずのないものが出現する症状)
病気が活動的な時期に現れやすく、非現実的な体験を伴います。
幻覚(げんかく):実際にはないものを知覚する症状で、特に幻聴(誰も話していないのに声が聞こえる、悪口が聞こえるなど)が最も多く見られます。
妄想(もうそう):根拠がないにもかかわらず、本人が確信して訂正できない考えのことです。被害妄想(誰かに監視されている、毒を盛られるなど)や、関係妄想(テレビや周囲の会話が自分に関係していると感じる)などが代表的です。
思考の混乱:考えがまとまらず、話の筋道が通らなくなる、話が飛躍するといった症状が現れます。
② 陰性症状(本来あるべきものが失われる症状)
病気が慢性期に入ると目立ちやすく、意欲や感情の減退が特徴です。
意欲・自発性の低下:何事にも興味を示さなくなり、自ら行動を起こすことが難しくなります。日常生活や仕事、学業への意欲が低下します。
感情の平板化:感情の起伏が乏しくなり、表情や声の抑揚が失われます。喜怒哀楽が周囲に伝わりにくくなります。
社会的引きこもり:人と関わることを避け、家に閉じこもりがちになります。
③ 認知機能障害
記憶力、注意集中力、問題解決能力など、情報を処理する能力が低下します。
集中力の低下:一つの作業に長く集中することが難しくなり、仕事や学習の効率が低下します。
作業記憶の低下:会話の内容を一時的に保持したり、複数の情報を同時に処理したりすることが難しくなります。
3. 原因と発症のメカニズム
統合失調症の原因は一つに特定されていませんが、現在では複数の要因が関与していると考えられています。
遺伝的要因:発症しやすい体質が遺伝する傾向がありますが、遺伝だけで発症が決まるわけではありません。
環境要因:思春期や青年期におけるストレス、発達期の環境などが発症のきっかけとなることがあります。
脳の機能異常:脳内のドパミンをはじめとする神経伝達物質のバランスの異常が関わっていることが分かっています。特にドパミンの過剰な活動が、陽性症状の発生に大きく関与していると考えられています。
4. 治療と社会生活における支援
統合失調症は、治療によって症状を改善し、安定した社会生活を目指すことが可能です。
① 薬物療法
治療の中心となるのは、脳内の神経伝達物質のバランスを調整する抗精神病薬による薬物療法です。特に、陽性症状に対して高い効果を発揮します。服薬を継続し、症状の再発を防ぐことが重要です。
② 精神社会的なリハビリテーション
薬物療法と並行して、生活技能訓練(SST: Social Skills Training)や心理教育、作業療法などが行われます。これは、再発防止と、社会生活で必要なコミュニケーション能力や日常生活能力を取り戻すことを目的としています。
③ 地域社会での支援
患者さんが地域で安定して生活できるよう、就労支援、ピアサポート、グループホームなどの福祉サービスが提供されています。周囲の理解と、無理なく社会参加できる環境が、病状の安定と回復に不可欠です。
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