1. 広汎性発達障害(PDD)とは?(現:自閉スペクトラム症/ASD)
かつて広汎性発達障害(PDD)と呼ばれていた概念は、現在、国際的な診断基準(DSM-5)では自閉スペクトラム症(Autism Spectrum Disorder: ASD)として統一されています。
ASDは、主に次の2つの核となる特性を持つ発達障害です。
・対人関係と社会的コミュニケーションの困難
・限定された、反復的な行動、興味、活動
このASD(旧PDD)は、その特性の現れ方や重症度、そして知的な発達の程度に非常に大きな個人差があるのが特徴であり、「スペクトラム(連続体)」という言葉が使われる所以です。
2. 広汎性発達障害に伴う知的遅れの特性
ASDを持つ人々のうち、約半数は知的障害(知的発達症)を併発していると言われています。この知的遅れは、ASDの核となる特性と密接に関連し、特有の困難を引き起こします。
① 認知の特性と偏り
ASDを持つ人々は、情報処理の仕方に強い偏りを持つことがあります。
視覚優位: 言葉や指示よりも、視覚的な情報(写真、図、文字)の方が理解しやすい傾向があります。
ワーキングメモリの困難: 一度に複数の指示を記憶したり、会話の中で情報を保持しながら処理したりすることが難しい場合があります。
細部へのこだわり: 全体像を把握するよりも、細かい部分や特定の情報に強く注目し、固執する傾向があります。
② 知的遅れがコミュニケーションに及ぼす影響
知的遅れを伴う場合、単に社会的な相互作用が難しいだけでなく、言語そのものの発達が遅れたり、言葉の抽象的な意味や比喩の理解が極端に困難になることがあります。
具体的な指示が必要: 曖昧な表現や抽象的な指示(例:「頑張ってね」「空気を読んで」)では行動を理解できず、**「〇〇をしてね」「△△の場所に座ってね」**といった具体的で明確な指示が必要になります。
不適切な発言や行動: 状況や相手の感情を推し量るのが難しいうえ、知的発達の遅れが加わることで、場の状況にそぐわない発言や行動をしてしまうことがあります。
3. 教育・療育における支援のポイント
知的遅れを伴うASDの支援では、個々の特性と得意な感覚に合わせた、構造化された環境と個別支援が最も重要になります。
① 環境の構造化
見通しが立たない状況や急な予定変更は強い不安につながるため、「いつ」「どこで」「何を」「どれだけ」行うかを視覚的に分かりやすく提示することが重要です。時間割や手順を絵や写真、文字で示すことで、本人の安心感と自立性を高めます。
② 得意な感覚を活用した学習
聴覚的な指示だけでは理解が難しい場合が多いため、視覚的な教材や触覚的な体験を通じた学習を取り入れます。例えば、概念や抽象的な言葉を教える際も、具体的なモノや図を使って結びつける工夫が必要です。
③ スキル獲得のためのスモールステップ
一つの課題を細かく分解し、小さな目標を達成していくスモールステップでの支援が有効です。成功体験を積み重ねることで、自己肯定感を高め、次の学習への意欲を引き出します。
4. 社会参加に向けた理解促進
知的遅れを伴うASDを持つ人々も、適切な支援があれば、社会生活や就労が可能です。彼らの特性を理解することは、トラブルを防ぎ、能力を発揮できる環境を作る上で不可欠です。
パニックの理解: 予測外の事態や感覚過敏(特定の音や光に過剰に反応すること)が原因でパニックになることがあります。これはわがままではなく、脳機能の特性によるものであることを理解し、刺激を減らすなどの冷静な対応が求められます。
得意なことの活用: 特定の分野に驚異的な記憶力や集中力を発揮する人もいます。社会では、苦手なことを矯正するよりも、その強みや得意な興味を活かせる就労分野や役割を見つけることが、彼らの社会参加を成功に導く鍵となります。
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